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大阪高等裁判所 昭和38年(う)736号 決定

被告人 K(昭一九・一・二九生)

主文

本件を神戸家庭裁判所洲本支部に移送する。

理由

被告人に対する本件公訴事実は、被告人は森○浩○、合○輝○、浜○和○及び樫○義○と共謀の上、○岡○子(当二〇年)、○崎○子(当二〇年)を交互に強姦しようと企て、昭和三七年○月○日午前〇時頃右両女を○○市○○一○五三番地○○テント村二三号バンガロー内に連れ込み、同日午前一時過ぎ頃、被告人及び浜○和○、樫○義○の三名が帰宅するように装つて同所を立ち去り、附近に待機するや、同所に残つた森○浩○及び合○輝○は同バンガロー内の電気を消した上、両女を相呼応して姦淫しようとして、森○が○岡○子の腕を掴んでその場に引倒して押えつけ、更らに手で口をふさぎ、顔を平手で殴るなどの暴行を加え、その抵抗を抑圧して強いて○子を姦淫しようとしたが、同女が極力反抗したため、その目的を遂げるに至らなかつたが、右暴行により同女に対し全治五日間を要する右外顎部挫創及び左口唇部打撲傷を負わせたものであるというのであつて、右事実は原判決挙示の証拠によつて認めることができる。そこで被告人に対し、刑事処分が相当であるか保護処分が相当であるかについて検討するに、○岡○子を強姦しようとして同女に暴行を加え傷害を負わせたのは原審相被告人森○浩○であつて、被告人は実行行為に加わつていないこと。被告人は森○、合○に誘われて犯行に加わつたものであつて斟酌の余地があること。被害者は強姦を免れ被害は比較的軽少であつたこと。被告人はこれまで交通法規違反により罰金刑に処せられた外、昭和三七年三月一三日神戸地方裁判所洲本支部で業務上過失致死罪により禁錮八月に処せられ、三年間刑の執行を猶予せられ、本件はその執行猶予期間中に犯したものではあるが、右以外にこれまで前科その他の非行歴がないこと。本件の主犯者森○浩○を初め他の共犯者がすべて刑の執行を猶予されていること。その他被告人の経歴、家庭の事情など記録並びに当審における事実調の結果を総合すると、被告人に対し刑を科するよりに保護処分に付するのが寧ろ少年法の目的に添うものと思われるので、少年法第五五条を適用し本件を神戸家庭裁判所洲本支部に移送すべきものとし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 山田近之助 裁判官 石原武夫 裁判官 原田修)

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